2012/05/31

向こう2カ月間の身の処し方を決めたこと


 月日の経つのは早いものである、とはいかにも凡庸な決まり文句だが、しかしその言葉に嘘は無い。気がつけば2ヶ月後には渡米を控えた身となってしまった。

 今年1月に、私は「向こう半年間の身の処し方」について表明した。今回は、その逐一について私がどれだけ達成できたかを確認するとともに、改めて「向こう2カ月間の身の処し方」について綴ってみようと思う。
 これから留学を志す方には、他山の石として笑覧いただければ幸いである。(もっともこのブログ自体が壮大なる他山の石と言えなくもないけど、まあそれはよしとして)


<リーディング>
 まず、「A practical guide for policy analysis」については、今年2月の記事で触れたように、何とか読み通すことができた(UCバークレーの先輩方が翻訳された「政策立案の技法」が、東洋経済新報社から今年6月に出版予定とのこと。私はすでに予約注文した)。
 次に、「1100 Words you need to know」は、かたつむりのペースでしか進んでいないものの、まだ完全に挫折したわけではない。向こう2カ月間は、もうちょっとだけペースアップして(なめくじのペースで)、切々と単語を覚えていきたいところだ。
 加えて、「ヤバイ経済学」という邦題で日本でもベストセラーになった「Freakonomics」と、アカデミック・ライティングで充実した成果を出すためのコツを軽妙な筆致で紹介してくれる「How To Write A Lot」と、北米の大学に留学する人の疑問点や悩みに対する回答がぎっしり詰まっている「Succeeding as an International Student in the United States and Canada」(※)を、それぞれ面白く読んだ。
 
※ 特に「Succeeding as an International Student in the United States and Canada」は、北米への留学を検討している人たちに広くお薦めしたい良書である。その理由は2つある。ひとつには、生活のセットアップ面において、例えば「住居が決まったら、すぐに自分の住所に自分で手紙を出しましょう。奇妙に思えるかもしれませんが、銀行口座開設などで住居証明として使えるので便利です」といった色気のあるアドバイスが満載であること。もうひとつは、北米の大学特有の価値観や文化的背景にも記述を割いており、「志望エッセイで何をアピールすべきか」といった観点からも参考となるからだ。私自身、もっと早く本書に出会っていればよかったと思っている。

 とはいえ、この程度の読書量ではとても足りないだろう。UCバークレーの先輩から聞いた話では、平均で1日100ページの本(もちろん洋書)を読み、1日10時間くらいは勉強しないと、授業についていくのは難しいとのことである。
 1日100ページ?1日10時間?
 いまの私に、その分量をこなす知的体力があるだろうか。これは間違いなく、無い。本によっては1ページ読むのに5分も10分もかかる私にとって、これは相当に危機的な状況といえる。
これを踏まえ、残すところ2ヵ月間で私が達成すべき目標を以下に挙げたい。

「1100 Words you need to know」の継続。(なめくじのペースで)
「表現のための実践ロイヤル英文法」の再読。(文法は私の深刻な弱点である)
「速読速聴・英単語 Advanced 1000」の読破。(いま半分くらい読み終えたところだ)
「Crossing the Energy Divide: Moving from Fossil Fuel Dependence to a Clean-Energy Future」の読破。(エネルギー・環境政策について勉強しようと購入したものの、ずうっと積ん読になっていた。落ち着いたら読もうなどと悠長なことを言っていると、そんな日はきっと永遠にやってこない)
「The Quest: Energy, Security, and the Remaking of the Modern World」の読破。(「石油の世紀」でピュリッツァー賞に輝いたダニエル・ヤーギンがフクシマ後のエネルギー市場について論じた700ページ強の大著。すでに「探求」という題の翻訳書が出ているが、ここはストイックに原書に挑戦したい)
「Berkeley: A City in History」の読破。(全米で最も先進的な街と評されるバークレーの歴史について書かれた本。これから2年間お世話になる土地について勉強しておけば、どこかで良いことがあるかもしれない)


<リスニング>
 数カ月前にiPod touchを購入したこともあって、ポッドキャストを聴く/観る時間はそれなりに確保できた。もっとも、それがリスニング能力の向上にどれだけ寄与したかについてはあまり自信がないけれど。
 いろいろ購読してみたが、特に気に入った番組を3つ、面白さ優先で以下に挙げる。もちろんすべて無料である。

「Talk Asia」(CNNのインタビュアーがアジア各国の有名人に質問をぶつけまくる番組。ジュリア・ギラード(豪首相)、ゲイリー・ロック(米国駐中大使)から、オダギリジョー(俳優)、秋元康(作詞家)まで、バラエティに富むゲストの話が面白い)
「60 Second Idea to Improve the World」(BBC系列。学者や社会活動家などのゲストが、1分以内に「世の中を良くするアイデア」をブリーフィングする番組。英語の勉強云々を超えて、公共政策を学ぼうとする身にはとても良い知的刺激になる)
「Wild Oceans」(「地球大紀行」とか、「プラネット・アース」とか、ああいうタイプの自然ドキュメンタリー番組。深海から浅瀬まで、夢見るように美しい光景を堪能できる。仕事帰りの電車内で観るには最適だ)

 リスニングについては、引き続き、面白さ優先でポッドキャストを聴き込んでいくこととしたい。ちなみに最近よく聴いているのは、「TED Talks」「CNN Student News」「大杉正明のCross-Cultural Seminar」である。


<経済学>
 スティグリッツの「入門経済学」を読了し、いまはiTunes UでUCバークレーの学部生向けの「Economics」の授業を少しずつ視聴している。しかし、日本にいるうちは、それ以上の領域には手を出さないことにした。
 本当なら「ミクロ経済学」「マクロ経済学」もじっくり勉強できれば良いのだけれど、いま私が優先すべきことは、ひとえに英語能力の向上(特にリスニングとスピーキング)である。そうと決めたからには、あれもこれもと手を広げて沈没するという、私の人生でお馴染みの失敗パターンを再び繰り返すわけにはいかない。そういうわけで、経済学に本格的に親しむのは、渡米後の機会に譲ることとしたい。


<スピーキング>
 UCバークレーの先輩からは、「シャドーイングをしっかりやっておくと良い」とのアドバイスをいただいた。これに従い、押し入れに眠っていた岩村圭南先生のNHKラジオ番組「徹底トレーニング英会話」のCDとテキストを引っ張り出して復習することにした。いまやっているのは2007年放送分。5年も前となると、復習よりも追憶に近いものがあるが、これはこれで悪くない。

 このほかに、下記3つの英語学校に通うことにした。
Business School International 「準上級クラス」(港区虎ノ門にあるビジネススクール風の英語学校で、講師陣もMBA卒のネイティブが多い。週1回、90分。毎回1~2時間くらいの予習が求められる)
CICOM-GLP 「Finance」(千代田区秋葉原にあるビジネススクール風の英語学校で、講師陣の多くがMBA卒である点も上述の学校と同じ。週1回、150分。ハーバードをはじめとするビジネススクールで実際に使われているケースを用いた授業で、毎回3~10時間くらいの予習が求められる。英語「の」勉強というよりも、英語「で」勉強する要素が色濃い)
A to Z 英語学校(文京区根津にある英会話スクールで、日本でも書籍を多く執筆されているデイヴィッド・セインさんが運営している。週1回、60分。予習は特に必要ない。私は奥さんと一緒にセミ・プライベートのレッスンを受けているので、実質的には「英語の勉強」と「夫婦間のコミュニケーション」を兼ねた時間となっている)

 もちろん、英語学校に行けば何でも解決などと強弁するつもりはない。欠点もいくつかある。その筆頭として挙げられるのが、私の銀行口座から結構な金額が流れ出ていくことだ。もうひとつは、(日本の英語学校に通う限りにおいては)生徒は基本的に日本人ばかりなので、どうしても多国籍の緊張感に欠けるというか、ある種の同質性に寄りかかってしまう部分があることだ。
 しかしながら、それを補って余りある長所もある。残業続きの職場を抜け出して(あるいは飲み会の誘惑に打ち勝って)わざわざ平日の夜に集まってくる社会人には意識の高い人たちが多いので、とても良い刺激になるということである。そういう種類の必要経費なのだ、と割り切れば、これは決して高くはない。そう自分(と奥さん)に言い聞かせる日々である。


<総括>
 正味な話、たった2ヶ月で英語力が劇的に向上するなんてうまい話はないだろうし、「2012年入学組でいちばん英語ができない人」のポジションからはどうあがいても抜け出せないんじゃないかという予感もある。しかしそれでもなお、あがけるうちにはあがいていたい。悪あがきこそは劣等生の最大の権利なのだ。


 苦しみは変わらない。変わるのは希望だけだ。(アンドレ・マルロー)

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