2013/02/12

自分の名前の非グローバル性について認識したこと

 私の名はSatoru。特に珍しくもない、ありふれた名前である。
 ・・・と思っていたのだが、どうもそうではないらしい。アメリカに来てから、銀行で、カフェで、市役所で、ことごとく私の名前を間違えられるのだ。たとえば、こんな具合に。

<Satori>
 サトリ。動詞の連用形である。「連用形」という単語を用いたのは何年ぶりだろう?
 サトーリ、と発音されることが多い。たぶん、ポリーニ、パゾリーニ、トスカニーニ、ムッソリーニとかの延長線上にあるのだろう。サトーリ。この顔でイタリア人は相当無理があると思うけど。

<Sotaro>
 ソータロー。サトーリに比べれば、ずっと日本的である。漢字で書くと、双太郎、壮太郎、爽太郎といったあたりか。
 悪くないんじゃないか。いっそのこと、今日からSotaroと改名したっていいくらいだ。
 襲名披露。Satoru改め、六代目Sotaro。よろしくお願い申し上げたい。

<Sataro>
 サタロー。漢字で書くと、佐太郎、左太郎、砂太郎か。
 砂太郎って何だ? と検索したら、「嘔吐物処理剤 砂太郎」なる商品が出てきた。曰く、ペットの糞尿や、酔っ払いの嘔吐など素手で触りたくない汚物に「砂太郎」をさっと振りかけ、汚物を固めてからホウキなどで掃き取って下さい  とのことだ。
 おいおい、砂太郎。あれはお前だったのか。大活躍じゃないか。いっそのこと、今日からSataroと改名したっていいくらいだ。(以下略)

<Saturo>
 サツロ。漢字で書くと、殺露・・・?
 然してその意味は、ロシア人を・・・・・・?
 いきなり物騒になってきたぞ。忘れてください。

<Sataru>
 サタル。なんだか腸カタルみたいで、嬉しくない。

<Satan>
 サタン。まさかの、悪魔だ。
 いや、スターバックスに悪魔が来るわけはないと思うんだけど。

<Saturn>
 サターン。まさかの、土星だ。
 そういえば昔、「MOTHER 2」というゲームがあって、「どせいさん」というキャラクターが出てきたな。そして私はプレステよりサターン派だったな。「バーチャファイター」、「蒼穹紅蓮隊」、「バトルガレッガ」、「超兄貴」、「ダイナマイト刑事」、それから「サウンドノベル 街」・・・。
 無意味な思い出が蘇る。


 さほど難解な名前でもなしに、Satoruは、なぜここまで認知されないのだろうか(これがSatochumauriziounconepomucenouncoskisantimavaltonyaskiuncovichとかいう名前だったらわかるけど)。いろいろ考えて辿りついた結論は、「欧米圏で名前の最後に「u」の母音が来ることはまずないから」というものだ。
 つまり、ポールも、マイケルも、ダニエルも、サルバドールも、カタカナ表記だと「u」で終わりそうな気配が一瞬ある。でも実際には、Paulで、Michaelで、Danielで、Salvadorなのである。そう考えると、「u」で終わる名前というのは相当に例外的、変態的というか、少なくとも彼らの脳内の「予測変換リスト」には入ってこないようだ。

 留学を通じて得られる気づきはいろいろある。私にとってのそれは、「Satoruという名前の非グローバル性」についてであった。
 以上、不真面目なようで真面目な話。




(2013年4月21日追記: その後、SatoroSaturuSoraroSatonが仲間に加わった。いずれも味わい深い名前だが、この中からひとつだけ選ぶとしたら、Satonを取りたい。ロシアの人形アニメ「ミトン」を思い出したからだ。あれは本当にいい映画だった・・・)