2012/04/05

スティグリッツ「入門経済学」を読んだこと

当初の計画よりも遅れてしまったが、ようやくスティグリッツの「入門経済学」(Introductory Economics)を読了した。お酒に弱い人が焼酎をちびちびとなめるように、少しずつ少しずつ読み進めていったので、達成感もひとしおであった。

私はこれまで経済学と名のつく学問に取り組んだことが無かった。しかし、まがりなりにも日本社会のサラリーマン、もといビジネスパーソンとして仕事をしていると、そのことを後悔する場面は少なくない。例えば、経済学の素養を積んだ人と意見交換をしていても、いまひとつ議論のトラックに乗り切れないというか、ある種の引け目を感じてしまうことがよくあった。
これを克服するためには、たぶん、断片的雑学的にではなく、しっかりと系統的に経済学を勉強する必要がある。そんなわけで私は一念発起して、経済学部の学生の教科書としても定評のある同書に挑戦することにしたのである。

この500ページを超える大著を(意外にも楽しく)読んだ私の感想は、主に以下の2点である。
ひとつには、経済学は、いまそこにある問題への解決策を対症療法的に与えてくれるものではないけれど、もう一歩下がったところで、問題に対する考え方の枠組みを授けてくれるものなんだな、ということだ。
もうひとつは、公共政策学という学問体系には思ってたよりも深く経済学が関わってくる、というか、むしろ経済学こそが公共政策学の基幹をなすものなのだ、ということである。
経済学を多少なりとも学んだ経験のある方にとっては、もしかしたらどちらも当たり前にすぎることかもしれない。しかし、私には重要な気づきであった。例えば、「失業とインフレーションはトレードオフ(交換)の関係にある」という経験則があって、これはすなわちインフレ率が上がると失業率は下がるけど逆もまた然りだよ、ということである。何でそんなことが言えるのか、あるいはその法則はいつどんなときにも正しいものなのかについて疑問を持たれた向きは、本書を読むと得心すること請け合いである(丁寧で滋養ある解説がこの本の素晴らしいところだ)。いずれにせよこのことを分かっているのと分かっていないのとでは、今後政府が何を為すべきか(何を為さざるべきか)について考える上で、相当な差が出てくるに違いない。

本書と併せて、岩田規久男「経済学を学ぶ」も読んだ。Amazonで評価が高かったので購入したのだが、評判どおりの素晴らしい本。無味乾燥な知識の羅列に堕すことなく、スティグリッツの本と同じように、物事の考え方、アプローチの仕方に力点が置かれているのが良かった。新書サイズで手軽に読めるのも良い。「入門経済学」を鞄に詰めて毎日通勤するのは、なにせ大変だったんだから。

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